グスコーブドリの伝記 てぐす工場

グスコーブドリの伝記 てぐす工場

ブドリがふっと目をひらいたとき、いきなり頭の上で、いやに平べったい声がしました。「やっと目がさめたな。まだお前は飢饉ききんのつもりかい。起きておれに手伝わないか。」 見るとそれは茶いろなきのこしゃっぽをかぶって外套がいとうにすぐシャツを着た男で、何か針金でこさえたものをぶらぶら持っているのでした。 「もう飢饉は過ぎたの? 手伝えって何を手伝うの?」 ブドリがききました。 「網掛けさ。」「ここへ網を掛けるの?」「掛けるのさ。」「網をかけて何にするの?」「てぐすを飼うのさ。」...
グスコーブドリの伝記  森

グスコーブドリの伝記  森

グスコーブドリは、イーハトーヴの大きな森のなかに生まれました。 おとうさんは、グスコーナドリという名高い木こりで、どんな大きな木でも、まるで赤ん坊を寝かしつけるようにわけなく切ってしまう人でした。 ブドリにはネリという妹があって、二人は毎日森で遊びました。 ごしっごしっとおとうさんの木を挽ひく音が、やっと聞こえるくらいな遠くへも行きました。二人はそこで木いちごの実をとってわき水につけたり、空を向いてかわるがわる山鳩やまばとの鳴くまねをしたりしました。するとあちらでもこちらでも、ぽう、ぽう、と鳥が眠そうに鳴き出すのでした。...
グスコーブドリの伝記 沼ばたけ

グスコーブドリの伝記 沼ばたけ

ブドリは、いっぱいに灰をかぶった森の間を、町のほうへ半日歩きつづけました。 灰は風の吹くたびに木からばさばさ落ちて、まるでけむりか吹雪ふぶきのようでした。けれどもそれは野原へ近づくほど、だんだん浅く少なくなって、ついには木も緑に見え、みちの足跡も見えないくらいになりました。  とうとう森を出切ったとき、ブドリは思わず目をみはりました。野原は目の前から、遠くのまっしろな雲まで、美しい桃いろと緑と灰いろのカードでできているようでした。そばへ寄って見ると、その桃いろなのには、いちめんにせいの低い花が咲いていて、...